3のニ乗は600族

小説やアニメが好きな人の日記みたいな何か

“文学少女”と月花を孕く水妖/野村美月 感想

 特別編と言いつつも5巻の後、7巻の前として出すことに大きな意味がありそうな一冊
 事実だけ並べれば悲劇でも遠子先輩の「想像」によって温かな物語に思えてくるところに「文学」の力を感じる


 ラスボス戦みたくてんこ盛りだった5巻でもそこまで絡まなかった、けど2巻で家族がらみのいざこざが示唆された姫倉先輩をこういう形で回収してくるかーといったところ。まぁ血筋や家の問題なら夏休みに別荘に連れ込まれて…という形になるのは確かにしっくりくる。
 恥ずかしながら元となった泉鏡花については全く存じ上げなかったのだけど、この話の前日譚である2巻と同じく悲劇に思えるような話から、解釈を膨らませて心が温まるような話が出てくるところに相変わらずすごさを感じる。にしてもそういうオチになるとは…


 「美しい夢は、目覚めてからもずっと、心の中に物語を残すのよ」やはりなんといっても遠子先輩のこの言葉、そしてそこから浮かび上がってくる本当のゆりの姿がいい。物語のパワーといいますか、やっぱり小説に魅せられた人間としては共感するものがあるし、ミステリー的な要素で外堀を埋めつつもそれを証明するような着地をしてくるのが美しい。


 そしてここまでの5巻でも割とそんな感じだったけど、心葉と遠子の仲のいい姉弟のような関係って部分が結構強調されていたように思う。特に今回は舞台が学校じゃなくて夏休み中の別荘で私生活的な面が出てたからそう感じるのかな?寝相悪いんだね…
 一方で遠子先輩、消えるのか…?とでも言わんばかりに不穏な要素もちらほら。文学少女らしからぬ自由人やってた遠子先輩がここにきて切ない文学少女っぽい雰囲気を出していることに若干の面白さを感じつつも、最後の最後に待ち構える次巻への期待が膨らむ。


 総じて、文学の良さを出しつつも、時系列以外はそこまで番外編感のない、むしろ本編に繋がるであろう一冊といったところ。正直元ネタに完全に馴染みがなかったから少し難しいところはあったけど、それでも面白かったです。